付き合って15年。
結婚3年目の僕の話を誰か聞いておくれ。
長くなってもいいなら。
結婚3年目の僕の話を誰か聞いておくれ。
長くなってもいいなら。
僕は高校時代、合唱部に所属していた。
ピアノやフルートはできたが、歌が超絶ヘタだったので変わりたいと思っていたのだ。
結果的に歌はマジで上手になり人生が変わるのだが。
合唱部は地獄だった。
吹奏楽などを経験した男はわかってくれると思うが、男子が少ない部活では男は奴隷である。
何を決定するにも大人数の女子に従わなくてはならないし、女子は大勢いるくせに肉体労働はぜんぶ男。
合唱部は女子:男子=8:2の割合だったから、合唱すれば男の声は小さく聞こえるのは自明の理。
それでも「声が小さい」「根性が足りない」「男として情けない」など、とにかく罵倒の数々。
コンクールで金賞を逃せばもれなく男のせいになるなど本当に酷かった。
幸い僕はピアノのスキルがあったことで男子の中では一目置かれていたのと、
おもしろキャラを演じることで女子には好かれていたため、矢面に立つことはなかった。
そうなると気弱な男子は標的になることが多くて何人か辞めていったやつもいた。
色々かばったりもしたが、大人数の女子という数の暴力は本当に強かった。
僕が辞めなかったのはマジで歌が上手くなりたいという思いだけだった。
ピアノやフルートはできたが、歌が超絶ヘタだったので変わりたいと思っていたのだ。
結果的に歌はマジで上手になり人生が変わるのだが。
合唱部は地獄だった。
吹奏楽などを経験した男はわかってくれると思うが、男子が少ない部活では男は奴隷である。
何を決定するにも大人数の女子に従わなくてはならないし、女子は大勢いるくせに肉体労働はぜんぶ男。
合唱部は女子:男子=8:2の割合だったから、合唱すれば男の声は小さく聞こえるのは自明の理。
それでも「声が小さい」「根性が足りない」「男として情けない」など、とにかく罵倒の数々。
コンクールで金賞を逃せばもれなく男のせいになるなど本当に酷かった。
幸い僕はピアノのスキルがあったことで男子の中では一目置かれていたのと、
おもしろキャラを演じることで女子には好かれていたため、矢面に立つことはなかった。
そうなると気弱な男子は標的になることが多くて何人か辞めていったやつもいた。
色々かばったりもしたが、大人数の女子という数の暴力は本当に強かった。
僕が辞めなかったのはマジで歌が上手くなりたいという思いだけだった。
毎日「女子って陰湿だよな」と思い、いかに男子が虐げられているか恨んだが、
本当に本当の被害者は実は男子ではなく女子の中にいることを知った。
基本的に練習はソプラノ、アルト、テノール、バスと男女分かれて練習する。
部屋も別々だったからそれまで全く気付かなかった。
ある日、顧問に言われてアルトの部屋に荷物を運びに行った。
すると、女子の中でもあまり上手でない子や気弱な子はほとんどいじめられていた。
僕は絶対音感があるのだが、その子の音程が合っていても「違う!」「外れてる!」と、
何度も何度もやり直しさせるのだ。
たまらず「〇〇さんの音程は合っているよ」と言うと
僕に絶対音感があると知っているくせに「男子にはわからない表現なの」とはぐらかすのだ。
仮にその標的にされていた子を田中さんとしよう。
田中さんは確かにあまり上手な子ではなかった。
だが、いつも明るく男子にも優しくしてくれて、
美人でギュっとくびれた腰でスタイルも良く、
密かに男子メンバーで「合唱部でかわいい子ベスト3」だった。
合唱部は吹奏楽部と違ってゴリラがいないので、かわいい子は多いのだ。
その中でベスト3に入るとなると、性格も含め相当なかわいい子だと思ってくれて構わない。
僕は男だから単純にかわいい子に好意的になってしまったのもあるが、
田中さんを使ってある一つの企てを試みた。
それは田中さんが上手になったら女子たちを見返してやれるのではないかと思ったのだ。
本当に本当の被害者は実は男子ではなく女子の中にいることを知った。
基本的に練習はソプラノ、アルト、テノール、バスと男女分かれて練習する。
部屋も別々だったからそれまで全く気付かなかった。
ある日、顧問に言われてアルトの部屋に荷物を運びに行った。
すると、女子の中でもあまり上手でない子や気弱な子はほとんどいじめられていた。
僕は絶対音感があるのだが、その子の音程が合っていても「違う!」「外れてる!」と、
何度も何度もやり直しさせるのだ。
たまらず「〇〇さんの音程は合っているよ」と言うと
僕に絶対音感があると知っているくせに「男子にはわからない表現なの」とはぐらかすのだ。
仮にその標的にされていた子を田中さんとしよう。
田中さんは確かにあまり上手な子ではなかった。
だが、いつも明るく男子にも優しくしてくれて、
美人でギュっとくびれた腰でスタイルも良く、
密かに男子メンバーで「合唱部でかわいい子ベスト3」だった。
合唱部は吹奏楽部と違ってゴリラがいないので、かわいい子は多いのだ。
その中でベスト3に入るとなると、性格も含め相当なかわいい子だと思ってくれて構わない。
僕は男だから単純にかわいい子に好意的になってしまったのもあるが、
田中さんを使ってある一つの企てを試みた。
それは田中さんが上手になったら女子たちを見返してやれるのではないかと思ったのだ。
次の日から僕は部活後、田中さんを呼び出してマンツーマンで指導した。
この頃(高校2年生)になると、僕は顧問から「音大で声楽科を目指してはどうか」と言われるほど上達していた。
アップライトピアノだけが置かれている小さな部屋があるのだが、そこにふたりきり。
もちろん練習がメインだったが、色々雑談もして楽しかった。
練習の時は暗い顔をしている田中さんだったが、明るく笑う田中さんは本当に美人だなと思った。
ある日、なんでもない日に田中さんから呼び出しをくらった。
「もしかし告白かも!?」と僕は意気揚々と放課後の教室へ行った。
「私ね、僕くんのことめちゃくちゃ嫌いなんだ」
開口一番にそう言われた。
僕は全く覚えていなかったのだが、高校1年生の時に田中さんに
「田中さんって〇〇先輩に顔立ちが似てるよね」と言ったことがあるらしい。
その先輩は合唱部で一番キレイな人で、僕としては褒め言葉として言ったと思うのだが、
実はその先輩はとてもキツい人で、田中さんを酷くいじめていたらしい。
それを聞いて田中さんは僕のことを心底嫌ってたそうだ。
僕がションボリルドルフになっていると
「でも最近はだんだんと好きになってきてるよ。まだ嫌いだけど。毎日ありがとうね」
と言って、教室を出て行ってしまった。
僕は複雑な心境でまた田中さんに指導することになるのだった。
この頃(高校2年生)になると、僕は顧問から「音大で声楽科を目指してはどうか」と言われるほど上達していた。
アップライトピアノだけが置かれている小さな部屋があるのだが、そこにふたりきり。
もちろん練習がメインだったが、色々雑談もして楽しかった。
練習の時は暗い顔をしている田中さんだったが、明るく笑う田中さんは本当に美人だなと思った。
ある日、なんでもない日に田中さんから呼び出しをくらった。
「もしかし告白かも!?」と僕は意気揚々と放課後の教室へ行った。
「私ね、僕くんのことめちゃくちゃ嫌いなんだ」
開口一番にそう言われた。
僕は全く覚えていなかったのだが、高校1年生の時に田中さんに
「田中さんって〇〇先輩に顔立ちが似てるよね」と言ったことがあるらしい。
その先輩は合唱部で一番キレイな人で、僕としては褒め言葉として言ったと思うのだが、
実はその先輩はとてもキツい人で、田中さんを酷くいじめていたらしい。
それを聞いて田中さんは僕のことを心底嫌ってたそうだ。
僕がションボリルドルフになっていると
「でも最近はだんだんと好きになってきてるよ。まだ嫌いだけど。毎日ありがとうね」
と言って、教室を出て行ってしまった。
僕は複雑な心境でまた田中さんに指導することになるのだった。
冬。
田中さんは上手になっていた。
元々あまり上手ではなく飲み込みも悪い方だったが、他のメンバーと比べても上手な方になった。
田中さんをいじめるような行為はなくなったらしい。
僕は勝利を確信した。
しかしこの頃になると別の方向で田中さんが酷い目に遭う。
僕と田中さんは付き合っているのではないかという噂だ。
それに一部の女子は腹を立てた。
それは僕がモテて獲られたくないからなんていう理由じゃなくて(そうだったよかったのだが)
恋愛関係になられると男女間の橋渡しができてしまって、そうそう男子を酷く言えないからである。
心底、陰湿だな、と思った。
そのため一部の女子は、今まで友好的だと思っていた子ですら、田中さんに僕の悪口を延々と垂れ流し、なんとか田中さんに僕を嫌ってもらおうと思ったらしい。
それはしばらく続いた。
春。
その日は田中さんの誕生日だった。
僕は嫌われてはいるのだろうが、せっかく仲良くなったのだから贈り物のひとつでもしないとな。
と考え、音叉(300円くらいのやつ)を田中さんにプレゼントした。
それを受け取った田中さんは顔をものすごいしかめて本当に嫌そうな顔をした。
やっぱり僕は嫌われているんだな。
他の女子たちに何か言われて僕のことを益々嫌いになったのだろう。
もう田中さんに関わるのは彼女のためにもならないな、と僕は悟った。
田中さんは上手になっていた。
元々あまり上手ではなく飲み込みも悪い方だったが、他のメンバーと比べても上手な方になった。
田中さんをいじめるような行為はなくなったらしい。
僕は勝利を確信した。
しかしこの頃になると別の方向で田中さんが酷い目に遭う。
僕と田中さんは付き合っているのではないかという噂だ。
それに一部の女子は腹を立てた。
それは僕がモテて獲られたくないからなんていう理由じゃなくて(そうだったよかったのだが)
恋愛関係になられると男女間の橋渡しができてしまって、そうそう男子を酷く言えないからである。
心底、陰湿だな、と思った。
そのため一部の女子は、今まで友好的だと思っていた子ですら、田中さんに僕の悪口を延々と垂れ流し、なんとか田中さんに僕を嫌ってもらおうと思ったらしい。
それはしばらく続いた。
春。
その日は田中さんの誕生日だった。
僕は嫌われてはいるのだろうが、せっかく仲良くなったのだから贈り物のひとつでもしないとな。
と考え、音叉(300円くらいのやつ)を田中さんにプレゼントした。
それを受け取った田中さんは顔をものすごいしかめて本当に嫌そうな顔をした。
やっぱり僕は嫌われているんだな。
他の女子たちに何か言われて僕のことを益々嫌いになったのだろう。
もう田中さんに関わるのは彼女のためにもならないな、と僕は悟った。
「私は、いまから僕くんと付き合います!!!」
と、田中さんは音楽室中に響き渡る声で叫んだ。
「そしてこんな陰湿な部活を引退してずっと僕くんと幸せになります!!!」
続けてそう言った。
それで勢いよく「ヒョオオオオオオオオ!!!!」と叫びながら、
音楽室を出て行った。
追いかけて、なんとか玄関で捕まえた。
「どどど、どういうこと?」
「なんかね、嫌いだったけど、だんだん好きって気持ちが溢れてきて」
「他の子の悪口を聞いている時に『僕くんはそんな人じゃない!』って思えてきて」
「音叉を受け取った時に『あ、この部活にいるよりこの人と幸せになりたい』って思っちゃって」
「いまさらだけど、好きです。付き合ってください」
と言われた。
僕は「ぼぼぼぼ、僕でよければ」とめっちゃ噛んだ
田中さんは速攻で部活を辞め、人間関係も清算しちゃった。
僕はその頃本気で音大を目指していたからなかなか合唱部を辞められず。
結局、僕は残り続けた。
それから付き合って15年。
大学は田中さんは北海道行っちゃうし、僕は関西だし、4年間の遠距離も経験した。
それから地元に戻ってきてお互い別々の職場で働いて、そろそろ結婚しようかって時に、
僕がバイクに乗ってたら大型トラックにはねられて全身グチャグチャになってしまい、
マジでやばかったんだけど、田中さんは音叉を握りしめながら毎日お見舞いに来てくれたらしく、
奇跡的に生還して、でも働ける身体じゃなくなったし、歌も歌えなくなったんだけど、
それでもいいってんで、3年前に結婚したのよ。
僕もリハビリがんばって回復してきて、社会復帰できる感じになってきて、
結局、音大の声楽科を出たから、近くの公民館とかで合唱サークルの指導者として働ける予定。
妻は妻で誰でも聞いたことある超大会社に就職しちゃったから、僕が働かなくても全然食べていけるんだけど、
「歌を教えてくれる僕くんは素敵だよ」と言ってくれるので、頑張ろうと思っている。
おわり
と、田中さんは音楽室中に響き渡る声で叫んだ。
「そしてこんな陰湿な部活を引退してずっと僕くんと幸せになります!!!」
続けてそう言った。
それで勢いよく「ヒョオオオオオオオオ!!!!」と叫びながら、
音楽室を出て行った。
追いかけて、なんとか玄関で捕まえた。
「どどど、どういうこと?」
「なんかね、嫌いだったけど、だんだん好きって気持ちが溢れてきて」
「他の子の悪口を聞いている時に『僕くんはそんな人じゃない!』って思えてきて」
「音叉を受け取った時に『あ、この部活にいるよりこの人と幸せになりたい』って思っちゃって」
「いまさらだけど、好きです。付き合ってください」
と言われた。
僕は「ぼぼぼぼ、僕でよければ」とめっちゃ噛んだ
田中さんは速攻で部活を辞め、人間関係も清算しちゃった。
僕はその頃本気で音大を目指していたからなかなか合唱部を辞められず。
結局、僕は残り続けた。
それから付き合って15年。
大学は田中さんは北海道行っちゃうし、僕は関西だし、4年間の遠距離も経験した。
それから地元に戻ってきてお互い別々の職場で働いて、そろそろ結婚しようかって時に、
僕がバイクに乗ってたら大型トラックにはねられて全身グチャグチャになってしまい、
マジでやばかったんだけど、田中さんは音叉を握りしめながら毎日お見舞いに来てくれたらしく、
奇跡的に生還して、でも働ける身体じゃなくなったし、歌も歌えなくなったんだけど、
それでもいいってんで、3年前に結婚したのよ。
僕もリハビリがんばって回復してきて、社会復帰できる感じになってきて、
結局、音大の声楽科を出たから、近くの公民館とかで合唱サークルの指導者として働ける予定。
妻は妻で誰でも聞いたことある超大会社に就職しちゃったから、僕が働かなくても全然食べていけるんだけど、
「歌を教えてくれる僕くんは素敵だよ」と言ってくれるので、頑張ろうと思っている。
おわり
無駄に長いが面白い。
面白く読ませて貰ったぞ。
>>631
ありがてぇ、ありがてぇ。
妻、大学生になるまで本気で「子どもは結婚した夫婦が市役所で許可をもらったら妊娠できる」
と思っていた子だったから、大学生になるまで一切そっちは無かったんだぜ。
ありがてぇ、ありがてぇ。
妻、大学生になるまで本気で「子どもは結婚した夫婦が市役所で許可をもらったら妊娠できる」
と思っていた子だったから、大学生になるまで一切そっちは無かったんだぜ。
幸せになった話をありがとう。